法人が青色申告を選択することによる最大のメリットは「繰越欠損金」です。当期の黒字と過去の赤字を相殺することにより、大きな節税効果が見込めます。本記事ではそんな青色繰越欠損金について解説します。
※本記事は中小法人(資本金1億円以下等)に係る繰越欠損金について記述しています。
1.繰越欠損金の概要
国税庁ホームページから繰越欠損金の概要部分を引用します。
確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前10年(注)以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入されます。
(注) 平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年です。
国税庁ホームページ「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
要するに、過去10年の間に生じた青色欠損金は、法人税確定申告の際に所得から控除できるということです。
注意が必要な点は、引用文注釈の「平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年」という部分です。「欠損金は10年繰越可能」とだけ覚えていると、平成30年度以前の欠損金がうっかり期限切れになりかねません。
また、実は「10年」という表現は正確ではなく、正しくは「10事業年度」です。例えば決算期を変更するなどして1年未満の事業年度が生じた場合、過去の欠損金の期限が早まることになります。
2.繰越欠損金の適用要件
青色欠損金の繰越控除の要件は以下の3点です。
青色欠損金の要件
①欠損金の生じた事業年度について青色申告書を提出していること
②その後において無申告の期間がないこと
③欠損金の生じた事業年度に係る帳簿書類等の保存があること
やや判断が難しいのが「(青色が取り消されるなどして)白色申告の場合」「(休眠期間など)無申告の期間がある場合」といったケースです。それぞれ以下解説します。
(1)白色申告の場合
青色申告が取り消されてしまった場合など、当期の申告が白色申告となった場合、繰越欠損金の取り扱いは以下の通りとなります。
白色申告の場合
①白色申告事業年度において生じた欠損金は繰越不可
②青色申告時代に生じた繰越欠損金は、白色申告事業年度においても控除可能
青色申告であるか白色申告であるかは、その事業年度に生じた欠損金を繰り越せるか否かに影響します。白色申告の事業年度に生じた欠損金は将来に繰り越すことができません。
一方、過去の青色申告時代に生じた繰越欠損金は、当期が白色申告であっても控除することが可能です。この辺り勘違いしやすいため区別して覚えておきましょう。
(2)過去に無申告がある場合
休眠企業を復活させた場合、過去数期間が無申告であるというケースがよくあります。この場合、
①青色欠損金の控除を行う事業年度の確定申告書を提出する前に
②無申告期間の確定申告(期限後申告)を行う
ことにより、過去の青色欠損金の繰越控除を適用することができます。
必ず順守しなければならないのは、繰越欠損金を控除しようとする事業年度の申告前に、過去の無申告期間の期限後申告を行わなければならないという点です。順番が逆になると繰越欠損金の控除は認められないため注意が必要です。